2018年6月1日金曜日

「第4回神志那弘志の実践パース講座」アフターレポート

2018年5月13日(日)、「第4回神志那弘志の実践パース講座」が行われました。
当日はあいにくの雨天となりましたが、受講申込みにキャセル待ちがでるほどの人気で、会場の教室はすぐに100名近い受講者で満席状態に。真剣な面持ちで開始を待つ受講者の表情からも本講座に寄せられる期待の高さが伺えます。



開講となり、登壇した神志那弘志氏からはまず、実践に特化した今回のパース講座の意義について説明がありました。アニメの制作現場では、知識や技術の不足により日々量産されるリテイクがスケジュールを圧迫し、さらにアニメーターを追い詰めています。そんなリテイクをもらわないためにも技術を磨いてほしいとのこと。神志那氏曰く「みんなが上手ければ誰も不幸にならない。みんな幸せ」


いよいよパース講座のスタートです。まずは「カメラの高さ」について。
受講者には簡単なキャラクターの頭の上、胸、膝の高さにそれぞれアイレベルとなる地平線を引いた絵を3枚描いてもらい、カメラの高さによる見え方の違いを実感してもらいます。カメラが高い(フカン)と地面が画面に占める割合が高くなり、画面を圧迫する上に奥行きが表現しづらい画になります。アニメにおける、一般的なカメラのアングルはややアオリくらい。空間に広がりや奥行きを持たせる画が多いとのこと。


次に画角(レンズ)について。
望遠と広角レンズによる画の違いを、実際に神志那氏自身が撮ってきた写真を並べて比較してみせました。後方の建物の入り込み方や手前に伸ばした手のサイズ感の違いなど、受講者から思わず軽く驚きの声が上がるほど、大きく変わることが分かります。


ここで神志那氏は、「カメラの高さと対象物までの距離が分からなければ、パースの意味はない!」と断言します。現場でリテイクを食らう人の多くは「カメラの位置を分かっていない」と。レイアウトを切る前にカメラの位置をしっかり考えることが大事、と強調していました。



その言葉を受け、いよいよ実践編です。
あらかじめ受講者には、簡単なオリジナルのキャラクター3体(5頭身の男女、4頭身の男性)と美術設定(橋に向かって伸びる堤防沿いの道)が配布されており、それを使っての実践となりました。まずは同じアイレベル、同じキャラサイズでカメラの位置(対象物との距離)だけを変えて2種類のレイアウトを描き、画角の違いで画が変わることを実感してみます。画角が変わると、背景である橋の欄干の画面に入ってくる本数が変わります。受講者が背景のサイズを割り出すのに四苦八苦している様子を見て、神志那氏は自己流の方法を紹介。それは、手前に立っているキャラクター(人間)をアイレベルの高さに合わせ奥に立たせてみる、というもの。基準となる人間が立っていることでその周囲のもの(この場合、橋の欄干)のサイズが「大体」分かる、と。神志那氏は「正確でなくていいです。ザックリで」と言います。アニメのレイアウトで、製図のように厳密に寸法を求めることはありません。その物がカットの主体でなければ、大体のサイズ感さえ合っていれば良い、とのこと。


次に、向かい合う男女というコンテ絵からレイアウトを起こしてもらいました。同じコンテ絵でも、カメラの位置や画角次第でいろんな画が描けます。奥の背景の入り方は個人の裁量によって様々。今回の課題には正解がありません。それは、コンテの前後がないのでそのカットが何を求めているのかわからないからです。ここでは、レイアウトの取り方のコツについてレクチャーがありました。まずは、絵コンテ(カット)が必要としているものを読み取って、とりあえずザックリと構図を取ってみる。例題で言えば、男女の頭の位置やそれぞれのサイズ感です。それが決まって、初めてアイレベル(カメラの高さ)が決まるのです。とその流れで、再び現場の話へ。


ニメーターにとって大事なのは、絵コンテを読み取る能力。コンテを読み取れないと、カットで要求されているものが分からず、リテイクをもらうことになります。リテイクになると、背景原図から全て描き直しになってしまいます。仕事である以上、極力無駄な作業を省き、いかにスピードアップしていくかが課題。「パース講座だけど、絵コンテを読み取ってレイアウトに落とし込む能力が一番大事です」。神志那氏はこの点を何度も強調していました。休憩を跨ぎつつ、応用編は「スロープの上下にいる人物を描く」。

ここで再び、神志那流のポイント解説です。設定した場所はすぐ横に壁があるので、そこへ基準となるキャラクターを移動させて高や奥行きを測ります。壁で測ったものを描きたい場所にスライドさせて描いていくというものです。壁に投影して一枚の平面上に並べて測ることで、俄然分かりやすくなります。スロープが出てきたことで、すべての消失点が一点に収束しない画を描くことになりました。ここで、パースを理解する時に間違いやすい点の解説が入ります。同じ画面内に消失点は複数存在します。というより、一つ一つの物に固有の消失点がある。全ての物の消失点が同じになるような、つまらないレイアウトにならないように、と注意がありました。街中の風景など、ビルや車が全て同じ向きに揃っていることなどありません。少しずつ角度が違うのでそれを意識するとリアルな絵が描けるとのことでした。


スロープの次に、階段の描き方の解説へ。今度は階段一段の高さを基準となるキャラクターから割り出して描いていきます。ただ、難易度が上がった上に、終了時間が迫ってきた関係で、解説が少し駆け足になってしまい、戸惑う受講者も多く見受けられました。神志那氏は「一度に全てを理解できなくてもいいです。理解をするためのきっかけになればいい」と話して今回のパース講座は終了しました。


その後、行われた親睦会には多くの受講者が残って参加し、和気藹々の雰囲気となりました。あにれくスタッフの自己紹介もあって、スタッフに声を掛け話し込む受講者も多く見られました。

改めて、受講していただいた皆様には、スタッフ一同より御礼を申し上げます。
ありがとうございます。